社会的波及効果の高い研究を実施するためには、研究費の確保が重要となっており、中央省庁が募集を行う競争的資金は重要な位置づけとなっております。当センターではURAが中心となり、学内研究者が行う競争的資金への申請支援を積極的に実施しています。
この度、本学理工学部の田端正明(たばた・まさあき)客員研究員(名誉教授)の研究提案が環境省の令和4年度環境研究総合推進費に採択されました。
研究の背景や採択課題の概要は以下の通りです。今後の研究の進捗にご注目ください。
記
1.採択となった競争的資金の名称及び採択された研究費枠
環境省・令和4年度環境研究総合推進費の
「環境問題対応型研究(ミディアムファンディング枠)」
※「環境問題対応型研究」全体での応募数は270件、採択数は44件(事務局発表)で、
倍率は約6倍でした。
2.研究課題名
廃棄建材表面の石綿の可視化による迅速検出・画像解析法の開発と災害現場検証
3.研究期間
令和4年度~令和6年度
4.研究の概要
【研究の背景】
石綿(アスベスト)は胸膜症や肺癌を引き起こす原因となり、石綿建材の製造は2006年に中止されています。しかし、それ以前の建築物には石綿建材が未だ残されており、築30年~40年の建物の解体件数が近年増大する中では、解体現場での石綿の飛散危険が高まっています。そのため、環境省は石綿飛散による健康被害を防ぐために、解体予定の建物に対して、解体前に建物の石綿検査・報告を2022年度から義務づけています。
一方で、近年、洪水等の建物が壊れるような災害が頻発し、その度に仮置き場や集積場に石綿を含む建材も多数排出・集積されており、そのような場所での石綿被害の恐れも増大しています。
このような社会的課題がありますが、従来の公定分析法は分析時間や費用の面から多数のサンプルをその場で分析し、石綿の有無を識別するには不向きであり、解体や災害現場ですぐに結果が分かる石綿分析法への要求が高まっています。
【本研究の概要】
本研究で検証を進める手法は、研究代表者の田端研究員らが開発したものです。建材中の石綿は主に表面に分布していることを突き止め、建材を破砕することなく建材表面の石綿を色素染色し、実体顕微鏡で観察するだけで石綿を迅速に・簡単に観察・識別できることを明らかにしました。本研究では、この識別手法の早期実用化を目指し、災害現場に適した分析操作の簡便性や分析時間、石綿の検出限界を検証します。
5.建材表面の染色石綿画像(例)

(写真中央付近に見られる繊維状の組織が石綿)
6.関連情報
●「大気環境中へのアスベスト飛散防止対策について」(環境省HP上の記事)
https://www.env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/index.html
●(独法)環境再生保全機構(環境研究総合推進費の公募事務局)HPからの公式発表
https://www.erca.go.jp/erca/pressrelease/pdf/20220310_1.pdf
●本研究に関する公表論文
Waste Management誌に掲載された論文
Masaaki Tabata, Masaki Fukuyama, Mitsunori Yada, Fumiyuki Toshimitsu,
“On-site detection of asbestos at the surface of building materials wasted at disaster sites by staining”, Waste Management 138(2022)180-188
※Waste Management誌のインパクトファクターは2022年3月16日現在7.145です(ELSEVIER集計)。
以上