ご出身はどちらですか?

生まれは鹿児島で、保育園から静岡の東にある沼津市で育ちました。沼津は漁港の町ですね。港があって、どんぶりにお刺身載せてデカ盛りの丼を食べさせる店があるようなところです。よく観光ツアーで東京の方々が来てました。あとは干物が有名で、銀座のデパートでは結構高値で売られたりしてるんです(笑)。
この道の先生になろうと思ったキッカケについて。

小さい頃に飛行機に乗せてもらって「すごいなぁ」って「パイロットになりたい」って思ってたんですけど、高校に進んで大学に行くのが当然みたいな空気になってきて大学へ行きました。最初は飛行機や車の開発がしたかったんですけど、航空工学科に入らなくても、航空に関わるような仕事とかできるんじゃないかなと、「機械科」の道に進みました。「機械科」というと幅が広いから選択肢を一本に絞らなくてもいいんじゃないかと思ってたんだと思います。結局、今やっている私の研究は飛行機も車も全然関係ないんですけど(笑)
もちろんそういう勉強はしてましたけど、3年生までは目標は全くない状況で、4年生で与えられた研究テーマから勉強が面白くなりました。それが今やっている研究で「表面処理」という研究です。当時1999年から2001年は「ナノテクノロジー」が流行った年で、いわゆる原子を制御して求める機能を導き出すというのが「ナノテク」なんですけど、その一つに「プラズマ表面処理」というのがあるんですよ。「プラズマ」は材料を溶かしたり固めたりというのではなくて、原子をイオンに変え、電子を出して表面を物理的又は科学的に改質して、自分の好きな機能を持った素材が作れるんです。そこに面白さを覚えました。「自分で素材を作ること」がすごいなって思いました。一旦就職したんですが、素材開発がしたくて大学に戻って研究をしていたら、そのまま先生になって現在に至る感じです。
研究についてお聞かせください。

「表面処理」の研究をしています。固体を蒸発させてイオンにしてプラズマという発光体を作って、そこへいろんな元素を混ぜ合わせて原料にして「膜」を作るんです。溶かしたり焼いたりでは得られない様な新しい組成を持つような「膜」ができる、新しいいろんな元素と複雑な元素が入った「膜」ができるんです。世の中にはいろいろな「膜」がありますが、「表面処理」の技術は、機械を対象にして、その表面に固くて熱に強い「膜」を作れるところが長所だと思います。例えば、機械工具に「膜」をコーティングして工具の寿命を延ばすことができます。家庭の包丁にはセラミックのコーティングがなされてますし、海で使うような部品でしたらサビさせないためにコーティングするなどの機械系の工具に使われるような「膜」を作っています。「工具を強くして、熱にも強くして工具が擦り減らないようにする事を目的とした研究」等をやっています。
この分野の基本はヨーロッパで生まれた技術で、空気のきれいなスウェーデンやドイツで生まれた技術なんですけど、これまでヨーロッパの人達が先導して、「膜」を作る元素の組み合わせを既に決めているんですが、まだやられてない組み合わせがあるんです。2018年から3、4年かけて苦労して作った新しい装置が、今年からやっと動き出したので、その装置を使って、もう一度「膜」を作る元素の組み合わせをキッチリと調べていきたいと思っています。その結果、新しいブレイクスルーみたいなものができたらと思っています。
学生に教えている授業内容について。

「機械工作」という授業を教えています。マンホール蓋などの金属を溶かして固める鋳造技術、刀を作るときに火で炙って刀を叩いて強くする鍛造技術、道具を使って加工する研削加工技術などのいろいろな加工技術を紹介する授業になります。
他には機械の仕組みを説明する「機構学」や「製図」の授業をやっています。
学生に向けて一言いただけますか?

僕が感じている感覚だけのものかもしれないですけど、学生の友達の感覚とか付き合い方が希薄になっているように感じます。それが若い人の距離の取り方なんでしょうけど、若者の中の踏み込んじゃいけない領域というのがあるんでしょうかね。40代の僕が見るとおかしな感じを受けるだけなのかもしれませんがそれを感じます。
全体的には礼儀正しくて良い子が増えたなと思います。ただ今の若い子は、いろんな情報が入って、情報量はあるんですけど、行動をするための情報・知識は少なく、ただ収集しているだけのように見受けられるときがありますね。情報は得るけれど、何かしらステレオタイプ、画一的な価値観が形成されていっているような気がして、行動も含めて、そこから踏み出すことがない様なところがちょっと気になりますね。若いときは失敗しても、そこを外れてもいいから、いろんなことに挑戦してほしいですね。
佐賀に住んで感じたことは?

日本酒が美味しいですね。あと、佐賀はサバを生で食べますよね。あれが本当に美味しいです。最初着任したときはちょっと退屈な街に感じましたけど、歳を取ってきて本当に好きになりました。佐賀のおすすめは「唐津くんち」と妻も私も好きな旅館「太望閣」。子供が釣りが好きなので、唐津が一番アクセスがしやすいので、あの辺の旅館は結構泊まりました。「太望閣」はすごく気に入っています。
休日はどのように過ごされていますか?

お酒が好きでお酒ばっかり飲んでます(笑)。おススメのお酒は、富久千代酒造の「鍋島」と天山酒造の「七田」です
今後の目標をお聞かせください。

まずは現在の実験装置をバージョンアップさせるのと分析装置を増やしたいです。薄膜はいろんな機能を詰め込めるのが長所なので、それに応じていろいろな分析をしていきたいので、分析機器を取り揃えたいというのがありますね。
県下の企業・自治体・学校の中で何かやるとしたらどんなことをやりたいですか?

これからは機械製品に関わる新しい表面処理を作っていきたいと思っています。もしなにかありましたら技術相談は受けますので、ご連絡いただければと思います。