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HOME >  佐賀大学の教員紹介 > 『佐賀大学の教員紹介』教育学部 萱島 知子先生

佐賀大学の教員紹介

2022.07.01
佐賀大学の教員紹介

教育学部 学校教育課程 萱島知子准教授

 

1.ご出身はどちらですか?

 

 大分県大分市です。

 

 

2.この道の先生になろうと思ったキッカケについて.

 

 高校生の時、どの学部、どのコースに進学すればいいのか迷って、何に興味があるのかわからなくなってしまって、情報収集しようと、図書館で本を読んだり、新聞を読んだり、とにかく自分が興味が持てそうなことを探しました。

その時たまたま新聞で見つけたのが、「昔から言い伝えられていた食物の効果についての研究が進んで、証明されてきている」という家政学の先生の記事でした。すごく面白いと思いました。もっと詳しく学びたいと思ったのが、この道に進んだきっかけです。

家庭科が前から好きだったこともあり、教育学部の家庭科コースに入って学ぶことにしました。

入学後、栄養学の授業を受けた時に、普段意識していないけど、食べ物の成分が身体の中で働いて効果を示していることが、とても神秘的だと感じました。私もこのような食べ物の働きを明らかにしたいと考え、研究者を志しました。

専門の食生活学は、生活の向上をめざす「家政学」の一分野です。

農学部でも食品についての研究はできますが、食生活学分野で研究している意味について考えてみると、「生活者の視点を忘れない」ようにしているところではないかと思っています。

私の研究はヒトを対象にしておらず、すぐに生活に応用できる訳ではありませんが、実生活レベルで考えるとどうなるか、実生活にどう応用できるのかを考えながら研究しています。

 

 

3.研究についてお聞かせください.(研究の魅力)

 

 食品が身体に与える働きは3つに分類でき、

①栄養機能、②感覚機能(嗜好性、おいしさ)、③生体調節機能※1です。

このうち、生体調節機能に関与している主な成分は、非栄養素です。非栄養素とは食物繊維やポリフェノールが代表的なもので、栄養素以外の成分です。

私は、卒論で非栄養素についてのテーマをもらったことがきっかけで、非栄養素やそれらが関与する生体調節機能に着目した研究を進めています。

 

※1生体調節機能の働き:食べ物によって病気を予防して健康を維持・増進する働き。血圧をコントロールしたり、ストレスをやわらげたりといった働きがある。

 

現在の主な研究テーマは、「ハーブのローズマリーのストレス軽減効果」です。
ストレスの研究をはじめたきっかけは、大学卒業後の助教時代に、ストレスホルモンが血管新生※2(血管が新しくできる現象)の亢進を介して、がんの病態を悪化するという論文を読んだことです。ストレスが、精神的な疾病だけでなく、身体的な疾病にも影響を与えることに驚きました。当時、食物学の先生に研究を教えてもらい、血管新生を抑制する成分の実験をしていました。非栄養素であるカルノシン酸という成分に注目したところ、血管新生抑制効果があることが分かったんです。そこで、カルノシン酸に血管新生抑制効果があるということは、カルノシン酸がストレスによるがんの進行を抑制するのではないかと考え、そこからストレスの研究に取り組むようになりました。カルノシン酸が含まれている食品は限られており、特にハーブのローズマリーやセージが知られています。カルノシン酸からつながって、現在のローズマリーの研究へ向かいました。

 

※2血管新生:既存の血管から新しい血管が形成される現象。がんをはじめとする疾病の進行に関与する。

 

過度なストレスは、疾病の発症や進行の一因となります。ストレスへの対処は、原因となるストレッサー※3を除くのが一番ですが、難しいですよね。それなら、食べ物で体内でのストレス応答を軽減できたら、健康維持につながるのではないかと考え、ストレスを軽減する食品成分を探しています。

 

※3日常的には例えば「ストレスで胃痛がする」という言い方をするが、学術的なストレスの意味は、何らかの原因(ストレッサー)があって、胃痛という障害(ストレス)が出る様に、刺激を受けたときに生じる緊張状態を意味する。

 

現在は、腸内環境をターゲットにして、ストレスによる腸内環境の悪化に対して、ローズマリーやその成分の影響を調べています。予想と反して、カルノシン酸単体では効果がみられなかったものの、カルノシン酸やその他の成分を含むローズマリー抽出物にはストレス軽減効果がある可能性が明らかになりました。単体の成分よりも、食品の抽出物に効果があるという結果は、実生活への応用という点から興味深いと思っています。

また、最近では、URAの方から紹介したもらった農学部の先生から、抗ストレス効果を評価する昆虫の実験を教えてもらい、飼育の仕方を工夫したりして研究をはじめています。
思い描いていたとおりに実験ができることはほとんどないのですが、研究の一番の魅力は、小さなことでも新しい発見した時の喜びだと思っています。

 

※4 URAとは、University Research administrator の略。

 

 

4.学生に教えている授業内容について.

 

 教育学部で小学校教員、中高家庭科教員を目指す学生を対象に教えています。
栄養学や調理学といった食物学の講義、実験、調理実習を担当しています。
食物学実験では、例えば、いろんな濃度の基本味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)の液を飲んでどの段階から味を感じるか自分の味覚感度を調べる実験、重曹とベーキングパウダーの膨らみ具合の違いを比較する実験、茹でると蒸すで野菜のビタミンC含有量が変化するか調べる実験などを行っています。

 

 

5.学生に向けて一言いただけますか?

 

 興味を限定せず、貪欲に学んで欲しいと思います。授業で疑問点があったら、わかるまで質問してきて欲しいなと思います。粘り強く何回も訊いてくれる学生は、完全に理解した後、ぐっと伸びるという印象を持っています。
また、大学生になって、生活の自由度が高まった一方、自分で管理しないといけないことも増えて、戸惑っている人もいるかもしれません。そういうときは、ぜひ「家庭科」で学んだことを振り返ってください!とても役立つと思います。

 

 

6.佐賀に住んで感じたこと.(佐賀に住んでよかったこと・佐賀の魅力等)

 

 大分と同じく温泉があって、食べ物も豊かということで、以前から佐賀には親近感を持っていたのですが、暮らしてみたら、ものすごく住みやすいです。電車ですぐに福岡へ行くことができますし、平地で移動しやすい。
また、食べ物が豊かで手に入りやすくて、有明海の海の幸(むつごろうなど)が普通にスーパーで売っています!川副町のトマトは味が濃くてびっくりしました。
佐賀大周辺にはスーパーが多いですね。農作物も新鮮で安価なので、買い物がしやすいです。
シュガーロードのおやつである「丸ぼうろ」は、初めて食べたとき、おいしさに感動しました。小城ようかんもシャリシャリしていて好きです。おかしのメーカーさんもたくさんありますね。やはり、佐賀は、食文化が豊かだと思います。

 

 

7.休日はどのように過ごされていますか?(趣味など)

 

 まんがを読んだり、コーヒーが好きでカフェめぐりしたり。お勧めは三瀬の珈琲屋さんです。佐賀はカフェが多くて、こんなところにこんな店が!と発見があります。
ローズマリーの生活での活用法としては、肉や野菜を炒めるときに使ったり、オイルに入れて香りを移すといいですよ。ハーブティーに使う時は、味や香りが強いので、レモンバームなどとブレンドするのがお勧めです。ローズマリーの香りには集中力を高める効果が言い伝えられています。学生が授業で眠そうな時、嗅いでもらうと効果があったんですよ!

 

 

8.今後の目標をお聞かせください.

 

 生体調節機能の研究をメインでやっていますが、嗜好性(おいしさ)についても研究しています。学内に設置されている味の強度を数値化できる装置(味認識装置)を使って、遺伝資源を活用し農作物化が目指されているノビル(野蒜)という山菜について、生と茹でたものの味を比較しました(「佐賀大学すくすく野蒜研究所」における研究)。
今後はこれまでやってきた生体調節機能と嗜好性の両面からアプローチする研究ができたらと考えています。嗜好性が高いと生体調節機能が上昇するのかといったことを明らかにしたり、ローズマリー以外のハーブや地域の食材へも注目していけたらいいなと思っています。

 

 

9.県下の企業・自治体・学校の中で何かやるとしたらどんなことをやりたいですか?

 

 ジョイントセミナーなどで高校生や中学生を対象に、だし(出汁)や食品の働きについてお話ししたことがあります。