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2022.02.21
佐賀大学の教員紹介

 

総合分析実験センター 龍田 勝輔 助教

 

 

1.ご出身はどちらですか?

 

 出身は福岡県の久留米の中でも一番田舎の「宮の陣」というところです。今はマンションがたくさん建っていますが、自分が子供の頃はスーパーもなかったので、毎週末久留米中心部まで買い出しに行っていました。周りが田んぼだらけで、学校へは農地のあぜ道が通学路でした。

 

 

2.この道の先生になろうと思ったキッカケについて

 

 農地ばかりのところで育ったので「自然」には興味はありました。特に大きな影響を受けたのは、小学校の4年と6年のときに参加した昆虫教室です。久留米の高良山に行って昆虫採集をして、それを持ち帰って標本にするというところまでやりました。とても面白かったですね。あとは、母の実家が梨農園をやっていて、廃棄した梨にカブトムシやクワガタが集まってくるので、それを捕まえて家で飼っていました。宿舎住まいだったので、昆虫なら飼いやすかったです。他にも、筑後川が近くを流れていたので魚釣りもやりました。そういう自然に囲まれた環境だったので、生き物全般に興味があり、高校も「生物」を取りましたし、中学校でも成績が安定してよかったのは「理科」でした。大学も自然と「農学部」に行きました。そして、3年のゼミは「昆虫学研究室」に配属され、そのまま、大学院に進みました。そのときに学生結婚をして、子供もできたので、「このまま研究の道で食べていくしかない!」と覚悟を決めて、就職難の時代でしたが、卒業後は他機関の研究員を経て、現在の職に就きました。

 

 

3.研究についてお聞かせください。(研究の魅力・抱負)

 

 病害虫ハスモンヨトウの味覚の研究をやっています。大学院の博士課程の研究ではショウジョウバエっていうハエを使って、食べるという行動が体内でどのように制御されるかという課題を遺伝的なメカニズムから解明していくということに取り組んでいました。昆虫の食べるという行動はあまり分かっておらず、おなかが空いたら食べたくなる等はあるのですが、じゃあ、お腹が空いたというシグナルをどう調整するかはその頃は分かっていなくて、遺伝子の解析も行われ、昆虫の中で味覚がはっきりと分析されていたのは「ショウジョウバエ」しかありませんでした。博士課程のショウジョウバエの研究では、2種類の餌を与え続けて、違った食べ方をする変異体を見つけだすというような大変な作業でしたが、しんどかったけれど楽しいというか、何か見つけたい、知りたいというのがありました。その頃から考えながら実験を行うことが身に付いたように思います。研究の世界って妄想で仮説を立てて立証するって流れなので(笑)。昆虫は言語が分からないので、こちらが妄想するしかないですよね。それから、佐賀大に戻って来て、やはり佐賀は農業県なので、農業害虫であるハスモンヨトウを対象にしようと思いました。ハスモンヨトウは幼虫の時に結構何でも食べてしまう病害虫で、秋口の大豆畑でも葉裏などによく見られます。被害が問題になっていて、味の好き嫌いや他の昆虫との味覚の差を調べ、他の虫や人間は嫌いではないけれどハスモンヨトウは嫌いな味がわかったら農薬の代わりに上手く使えるのではないかと思いました。そして、研究していく中で、ハスモンヨトウはとても塩(塩化ナトリウム)が嫌いなことが分かりました。どの生物にも、美味しい、マズイを感じる境界濃度というものがあるのですが、哺乳類は250mM、我々がしょっぱいと感じる海水は500mM位です。ショウジョウバエは100mMが境界濃度なんですがハスモンヨトウはなんと1mMくらいなんです。濃度が極端に低い塩でも嫌がるということが分かったんです。このようなハスモンヨトウの特徴には、まだ個体差や地域差があるため、そこを研究しています。また、塩だけでなく苦味物質を混ぜて使ってみたり、あとは苦手かどうかが分かっていないような別の成分を使って、ハスモンヨトウの被害を抑制できるものを見つけていきたいと思っています。

 

 

4.学生に教えている授業内容について

 

 専門は「昆虫学」ですが、総合分析実験センターの放射性同位元素利用部門に所属していますので、基本的にメインで教えているのは「基礎放射線科学」です。放射線に関する基礎の授業になります。あとは、大学院生に対して「感覚分子細胞学特論」を教えています。こちらは味覚嗅覚に関する基礎的なこと、研究の仕方や味を感じるための細胞、においを感じるための細胞の機能などを話しています。

 

 

5.学生に向けて一言いただけますか?

 

 高校までと大学からと何が違うのかなって思った時に、文系の学科のことはわからないんですけど、特に理工学部とか農学部になると、研究室に入って卒論を始めるときにいきなり別世界になるんですよね。それまでは座学で知識を覚えていくことが中心で、3年になって研究室に入って、いきなり研究テーマを与えられると、最初はすごく戸惑うと思うんです。もちろん先生がいろんな指示を出したり、助言をしたりして進むことも多いし、先生から「こういうゴールがあるはずだから」って提示されると思うんですけど、先生もそのゴールが正しいかどうかも本当はわからなくて提示してるんですが(笑)妄想からこうなったらいいなって願望が生まれて、願望を達成するために実験をするんで、「妄想力」や「想像力」、「考える力」、「無から有を作り出す」という作業がいきなり発生します。これまでと違って「考える力」や「想像する力」が求められると思うのでそれに注力して4年間を過ごしていただければなと思います。大学はそういう場なのかなって思います。
 各先生のやっていらっしゃる研究もマニアックで、社会人に出て役に立つものってそんなにはないと思うんですよ(笑)大学で唯一役に立つところって、そうやってクリエイティブに考えて実践したり、周りとコミュニケーションを取りながらプロジェクトで働いたり、より実社会の実践に近い形のことはやっていると思うんですよね。会社に入ってゼロからイチを作らなきゃいけないとなったときに、全然内容は違うと思いますが、大学で研究に携わったときにやってきたトレーニングがかなりうまく生きていくんじゃないかなって思います。ですので、言い方は悪いですけど「妄想をいっぱいしてください」(笑)。例えば、すごく著名な先生とかは散歩するらしくて、必ずお昼を食べた後に1~2時間くらい散歩をして妄想をしているらしいんですね。数学の先生とかもやるらしいんですけど、やっぱりそういうときの方がアイデアや解答とか出るらしいです。私はお風呂で湯船にぼーっと浸かっているときにアイデアが浮かんだりします。一言でいうと大学に来たら次のところでも生かせるように、座学で得られる知識だけじゃなくて「考える力」「妄想力」を養ってほしいと思います。

 

 

6.佐賀に住んで感じたことや佐賀のおすすめのスポットを教えてください。

 

 佐賀はもともとの地元とほとんど気候も土地柄も変わらないですし、こじんまりしてとても住みやすいです。釣りは唐津に行けますし、海産物、お肉、海苔など安くて美味しい食べ物もありますし、本当住みやすいです。久留米出身ということもあってラーメン屋さんにはよく行きます。よく行くのは川副町にある「いちげん」と大学近くにある「田中商店」です。この2軒はおススメです。

 

 

7.休日はどのように過ごされていますか?

 

 休日は子供とゲームをしたり、釣りをします。今はコロナで行けてないんですけど、妻の実家は歩いて2~3分で浜なんです。キスがよく釣れるので、しょっちゅう行って、ハマっていた時はひたすらキス釣りをしてました。あと、高校のときからロックやハードロックをやっていたので、ギターやベースを弾けるんですけど、ときどき休みのときも弾いています。

 

 

8.今後の目標をお聞かせください。

 

 佐賀県は農業県なので、農薬で抑えられている病害虫を害虫の特性で抑えられるような新たな手法の開発などに繋げていけたらいいなと思っています。まだ着手はできていませんが、「味覚や嗅覚」の観点からカメムシや他の害虫の「防除」につなげ、佐賀の農業に貢献できればいいなと思っています。

 

 

9.県下の企業・自治体・学校の中で何かやるとしたらどんなことをやりたいですか?

 

 重複しますが、味覚・嗅覚や分子の内容で、県の農業に貢献できればいいなとは思っています。何年か前にもありましたが、玉ねぎの病気では連携している先生にお話しが来てましたし、にんにくは線虫がすごく問題になっているらしいんです。なので、突発的に何かの虫とかが大量発生して売れないレベルのこととかがあって、昆虫がターゲットになったときにはいつでもお役に立ちたいなとは思っています。持っている知識とかはフル活用をして役立てたいなとは思っています。

 

 

10.総合分析実験センターの紹介をお願いします。

 

 共用機器を管理するセンターで、放射性同位元素利用部門は医学部にあります。ガンマ線を充てることができる機械があり、RI部門の技術職員が在籍していますので、興味がある方などはご相談ください。センターの共用機器は一部を除き一般の方の利用もできますので、お気軽にお問い合わせください。