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佐賀大学医学部附属再生医学研究センター
村田 大紀先生

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2022.09.12
佐賀大学の教員紹介

佐賀大学医学部附属再生医学研究センター  村田 大紀助教

 

1.ご出身はどちらですか?

大阪府和泉市です。大阪府の南部に位置する、いわゆるベッドタウンと呼ばれる地域ですが、私が生活していた頃はまだ、近くの小・中学校が山に囲まれていたので、比較的自然豊かな環境で育ちました。今では学校周囲の山は切り開かれて、多くの家やマンションが立ち並んでおり、人口が増加しているという点では、大阪府の中で有数の自治体になっています。

 

 

2.この道の先生になろうと思ったキッカケについて.

高校生の時に、「馬にとって “不治の病” と呼ばれる疾患に対して、治療法を開発する研究に取り組みたい」と考えたことが、研究者になろうと思ったキッカケです。そのキッカケの始まりは、中学生の時に友人から、競走馬育成シミュレーションゲームを勧められたことだと思います。そのゲームの中では、育てた馬が怪我をしたり病気になることがあり、それによって競走馬から引退させられたり、時には安楽死されたりすることがありました。そこで、「実際の競走馬はどのような生活を送っているのかな?」、「競走馬は実際にどのような怪我をしたり病気になるのかな?」、そして、「怪我をしたり病気になっただけで、どうして引退したり安楽死されたりするのかな?」など、競走馬について徐々に興味を持ち始め、競馬に関する本やビデオ(今では死語かもしれませんが...)をお小遣いで購入して、少しずつ調べるようになりました。それにより、「実際の競走馬も怪我や病気が原因で引退することがあり、早く走る馬ほど怪我をしやすいという話もあること」、「競走馬の怪我や病気には、既存の治療法では治せない“不治の病”が存在すること」、「“不治の病”と診断された場合、馬をそれ以上苦しませないために、やむを得ず安楽死の処置がとられる場合があること」、そして当時は、「“不治の病”の中でも特に屈腱炎(くっけんえん)という運動器疾患が原因で、優秀な競走馬の多くが引退を余儀なくされていること」などを知りました。それらの情報を知った私は、「“不治の病”に対する治療法を確立することができれば、競走馬を安楽死から救えたり、引退せずにレースへ復帰させたりすることができるのではないか。そうすれば、多くのファンもその勇姿を再び見ることができるようになる。僕も1人の競走馬ファンとして、その現場に立ち会いたい。」と思うようになりました。そこで、馬の“不治の病”に対する治療法を開発する研究者になることを志し、まずは動物の医学を大学で学ぶために獣医学科へと進学しました。

 

 

3.研究についてお聞かせください.(研究の魅力)

大学生の時には、馬だけでなく牛・豚・犬・猫などについても学びましたが、馬だけでも様々な疾患があることを知りました。またその頃、再生医療の研究に関する情報をよく耳にするようになり、これまで治療法がなかった疾患に対して、幹細胞などを適用することで治療できる可能性があることも知り、とても興味を持ちました。大学では卒業研究が必修だったのですが、疾患に対する治療法を開発するための再生医学研究とは異なり、からだのしくみを理解するための生理学研究に携わりました。そこでは、研究のイロハを学ぶことができ、研究に対する基本姿勢についても教わりました。その後、馬や犬・猫の臨床医として経験を積んだ上で、いよいよ再生医学研究を開始するために、大学院(獣医学研究科)へと進みました。大学院では、馬の“不治の病”の1つである軟骨疾患(これも運動器疾患の1つ)に対して、幹細胞を移植する研究に携わりました。そこでは、再生医学の知識や研究ノウハウも然ることながら、研究者として必要なスキルについても学び,研鑽を積むことができました。そして、佐賀大学に着任した現在では、馬だけでなく人の疾患に対しても新たな治療法の確立を目指して、再生医療の研究に取り組んでいます。本学で実施している私の研究では基本的に、バイオ3Dプリンタと呼ばれる機械を使用して細胞凝集塊を剣山上に配置し、それぞれの凝集塊を融合させて1つの立体的な細胞集団として構築することで、人工材料を用いることなく細胞構造体を造形します(図もご参照下さい)。その後、目的に応じて特異的な培養を構造体へ施すことで組織や臓器を創出し、それらを移植することなどにより傷んだ組織や臓器を再生および再建することを目指しています。その目標を達成することで、治療法のない疾患や既存の治療法に問題や課題がある疾患に対して、新たに治療の選択肢を提供することができると考えています。

 

 

4.学生に教えている授業内容について.

現在は、『臓器再生医工学入門』という研究室配属型(医学科2年生の学生さん自身が、興味のある研究室を1つ選び、そこへ直接赴いて指導を受けながら実験を行う形式)の実習を担当しており、学生さんには我々が行っている再生医学研究(組織や臓器を作製する工程の一部)について、実際に肌で体感してもらっています。具体的には、まず細胞を培養することから始め、その細胞を用いて細胞凝集塊を作製した後に、その凝集塊をバイオ3Dプリンタにより剣山上に配置して、細胞構造体を造形してもらっています。また、造形した構造体をさらに培養し、その性状を解析して造形直後のものと比較検討することで、組織や臓器の作製について理解を深めてもらっています。さらに、プラスチック製品造形用の3Dプリンタを用いて、細胞構造体を培養するための容器についても、学生さん自身でデザインして作製してもらっています。

 

 

5.学生に向けて一言いただけますか?

「人間万事塞翁が馬」という言葉を座右の銘にされている方は多いと思いますが、目の前の出来事に一喜一憂せず、将来へ向けて今できることに全力で取り組むことは、これまで私も心がけてきたことです(心がけていても、実践することが難しい場面はたくさんありますが...)。学生の皆さんには、人生をかけて叶えたい夢(達成したい目標)を見つけ、過去に拘泥せず、未来を憂えず、今できることに集中しながら、その実現に向けて邁進して欲しいと思います。目標に向かって一生懸命取り組むことこそ、自分自身の人生を豊かにする最大の秘訣だと、私は考えています。

 

 

6.佐賀に住んで感じたこと.(佐賀に住んでよかったこと・佐賀の魅力等)

新鮮な海の幸と山の幸が豊富にあることは、佐賀県の大きな魅力の1つだと思います。また、お米も美味しく日本酒の製造が盛んに行われており、美味しいお酒の銘柄が多数あることを知って驚きました。佐賀県は、全国でも有数のグルメ王国であると感じながら、佐賀県産のご馳走にいつも感謝しています。

 

 

7.休日はどのように過ごされていますか?(趣味など)

家族で買い物へ出かけたり、家で子供や犬と遊んだりしています。また、私自身は小学2年生から高校生の時までサッカーをしていたこともあり、サッカー日本代表の試合を観戦したり、サッカーのテレビゲームをしたりすることで、気分転換を図っています(試合に負けたりすると、逆にストレスになることもありますが...)。大型連休の際には、非日常を味わえる大きな楽しみとして、家族で旅行へ出かけることもあります。

 

 

8.今後の目標をお聞かせください.

現在私は、軟骨・骨の欠損、靭帯・腱の断裂、および、半月板の損傷など、人の運動器疾患に対して適応可能な組織を創出するため、日々の実験に取り組んでいます。今後は、腎臓などの臓器の創出についても、本格的に研究を開始する予定です。これらの研究から得られる成果を、1日でも早く、そして、1つでも多く、実際の医療現場へ提供できるよう日頃の実験に励み、人々の生活を少しでも豊かにすることができればと思っています。また、上記の研究に併せて、馬や犬・猫の再生医学研究にも並行して取り組んでおり、将来的には馬の屈腱炎をはじめ様々な動物の難治性疾患に対しても、治療法の確立を実現したいと考えています。

 

 

9.県下の企業・自治体・学校の中で何かやるとしたらどんなことをやりたいですか? 企業や社会人の方へ一言いただけますか?

私がこれまで実施してきた研究やその他の関連研究について、まずはわかりやすく紹介・解説させて頂いた上で、「未来の(獣)医療や人々(と動物)の暮らし」について、一緒に考えてみたいと思います。また、皆さんの夢や希望、そして、不平・不満や不安についても、是非伺ってみたいと思います。もしかしたらそこに、未来を前向きに考えるためのヒントが隠されているかもしれません。

 

 

10.医学部 附属再生医学研究センターのご紹介をお願いいたします.

再生医療の研究領域には多数の分野があり、多くの研究者がそれぞれ興味のある分野において、オリジナリティあふれる活動を行っています。そのため、数々の工夫を凝らした実験手法により、バラエティに富んだ研究が進められています。その中で私達は、人工材料を用いることなく細胞のみを立体的に構築した上で、組織や臓器を研究室内で創出する方法について研究を行っています。この手法は、世界ではまだほとんど取り組まれておらず希少性が高いため、研究成果が実用化されるまでには多くのハードルがありますが、その分やりがいのある独創性の高い研究だと考えています。これからも、課題の1つ1つを解決して研究を進めるため、スタッフ・大学院生・共同研究先の先生方と協力して、実験に励みたいと思います。また、私達の研究を一緒に盛り上げてくださる学生の方・社会人の方・企業の方がいらっしゃいましたら、是非お声がけください。