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HOME >  佐賀大学の教員紹介 > 『佐賀大学の教員紹介』 理工学部  藤澤 知績 先生

佐賀大学の教員紹介

2021.06.03
佐賀大学の教員紹介

理工学部 理工学科 化学部門 藤澤 知績 准教授

 

 

1.ご出身はどちらですか?

 

 出身は岐阜県岐阜市です。幼少時は祖父母の住んでいた同県の揖斐川町(いびがわちょう)に住んでました。揖斐川の上流の方で、揖斐峡という自然のきれいな渓谷がある田舎です。確か3歳くらいまで過ごしたと思います。両親の仕事の関係で岐阜市に住みながら、週末は頻繁に揖斐川町に行きました。夏はアユ釣りをして遊んでましたので、佐賀でもアユ釣りスポットを探しています。

 

 

2.この道の先生になろうと思ったキッカケについて

 

 高校の時から、研究職に就きたいなってぼんやりとした気持ちがあったと思います。なので、大学院の博士課程まで進む動機になったんだと思うんですよね。小さいころに自然の豊かな田舎で生活をして、昆虫や植物といった生物が好きでしたし、「解き明かす」ような研究に興味があったことが、今の仕事につながったのだと思います。

 

 

3.研究についてお聞かせください

 

 僕は、もともと大学院のときは結構古典的な溶液の研究をしていました。超臨界水や超臨界アルコールとして知られる高温高圧の流体の中の分子を測っていましたが、特別研究員としてアメリカに行ったときに先生に「緑色蛍光タンパク質GFP(※1)の研究をしたらどうだ」と言われたのが転機になりました。GFPには光る化合物(色素)がタンパク質の中に入っていて、その色素はタンパク質の中でしか光らないんです。このようなタンパク質の中で巧妙に実現される化学反応を知った時に「僕はこういうことがやりたかったな」って思ったんです。それが、自分が揖斐峡で育んだ感性と、研究テーマとがようやくつながった瞬間だったんです。それからはずっとタンパク質の研究をしてきました。
 研究室ではラマン分光法(※2)を使って、タンパク質の化学反応の機構について調べています。タンパク質の中の分子のラマンスペクトルから、反応していく分子の構造情報が出てきて、そこから反応のメカニズムがいくつか見えてくるんです。ラマン分光法が使える対象がものすごく幅広いので、ラマンを使ってる人は山ほどいるんですけど、光反応をするタンパク質に応用しているグループは限られます。一方で、スタンダードな方法ってすごく便利で、使いやすいし、有用な情報が出てくるから昔から使われてきた方法ですが、それだけではやっぱり見えないものがあるんです。そうすると、どうしても新しい手法開発ということが必要になって、それで今やっているのがラマン光学活性法(※3)という新しい手法を使った光反応性のタンパク質の研究なんですよね。通常のラマン分光法はタンパク質の分子の三次元的な構造は見えないんです。タンパク質は立体的な分子で、その中で分子が立体的な構造を変えていくんですけど、その様子を見るための方法としてラマン光学活性法という手法を開発しています。
 研究は、結構地味な作業を繰り返して、積み重ねて、ようやくできなかったことができるっていうプロセスの繰り返しなので、分からなかったものが自分の力でわかるときは本当に嬉しいです。なかなかそこまでいけることはないので、そういう瞬間が一番エキサイトします。

 

※1 緑色蛍光タンパク質GFP:
オワンクラゲが持つ蛍光タンパク質で、細胞中の特定のタンパク質の局在分析などに広く応用されている。1960年代に下村修博士が発見。2008年ノーベル化学賞受賞。


※2 ラマン分光法:
物質に光を照射して散乱される微弱な光のスペクトルから分子構造を解析する手法


※3 ラマン光学活性法:
ラマン分光法の発展版といえるもので、分子の立体構造や絶対配置が分析できる分光法。光学活性のある様々な生体分子等の構造変化の解析に用いられる。

 

 

4.学生に教えている授業内容について

 

 専門科目の量子化学と物理化学Bを教えています。あとは生物化学の入門的なところを教えています。

 

 

5.学生に向けて一言いただけますか?

 

 僕は大学時代にサボった時期もあって、なんとか頑張って単位は取ったんですけど、そのときにコツコツ積み重ねた人には絶対勝てないと実感しました。結局、サボった分を取り返しただけで、最低限のレベルに達しただけですから。一時期すごく頑張れるというのはすごいことかもしれませんが、トータルで見ると大してすごくないなって、そんなものより(少しの頑張りを積み重ねながら)継続的にやった人には絶対負けるなって気づいて、これはラクしちゃダメだなって思ったんです。なので、学生には時間と労力をかけて勉強したり、研究を頑張ってほしいです。例えば、ちょっと時間をかけて勉強したら以前わからなかったものが理解できたとか、ちょっと労力を費やしてPPTスライドを作って、皆が「うんうん」って発表を理解してくれたら「あっこうやったらいいんだ」って思うと思うんです。その感覚を自分で掴んでいってほしいですね。

 

 

6.佐賀に住んで感じたことはありますか?

 

 佐賀ののどかな雰囲気のところが好きです。ときどきバッタとかホタルに街中で遭遇するのも実は楽しんでいます。また、古湯温泉にたまに行きます。岐阜とか関東とか温泉に行こうと思ったら結構遠いので、温泉は結構時間かけて入るもんだと思ってたんです。佐賀にいると近くに温泉があるからこんな気軽に行けるんだっていうのは驚きましたし、佐賀の魅力だと思います。

 

 

7.休日はどのように過ごされていますか?

 

 今は0歳の子供がいるので、その子に掛かりきりです。寝不足です(笑)

 

 

8.今後の目標をお聞かせください。

 

 ラマン光学活性分光法を使ってタンパク質の反応中間体の計測をするのが目標ですね。誰もやったことのない難しい測定で、数年前は遠い目標だったのですが、最近はようやく実現できそうなところまで来ている気がしています。

 

 

9.県下の企業・自治体・学校の中で何かやるとしたらどんなことをやりたいですか?

 

 やっぱり何か佐賀独自の産業とつながれたらいいですね。佐賀県の動植物や農作物から得られる有効成分だったり、有田焼や伊万里焼だったり、そういった地場産業とかかわるものの分光分析で役に立てたらいいなという気持ちはあります。基礎研究はなかなか社会貢献度が低いと思っているので、何らかの形で貢献することがちょっとでもできれば嬉しいです。