佐賀大学リージョナル・イノベーションセンター

お問合せ

佐賀大学の教員紹介

HOME >  佐賀大学の教員紹介 > 『佐賀大学の教員紹介』海洋エネルギー研究センター 森﨑 敬史 先生

佐賀大学の教員紹介

2022.03.17
佐賀大学の教員紹介

海洋エネルギー研究センター 森﨑 敬史 助教

 

 

1.ご出身はどちらですか?

 

 

 熊本県熊本市です。まちなかに近いところですが、自然もあり外で遊べる場所が多いところで育ちました。

 

 

2.この道の先生になろうと思ったキッカケについてお聞かせください。

 

 小学校のころに、プラモデルとニッパーをセットでもらって、それを組み立てることに夢中になっていました。また、家の近くには倉庫があったのですが、そこで働いている人を見ながら「このような場所働けたらいいな」という思いを抱いてました。高校で工業高校に進学したのはそういう漠然とした思いがあったからだと思います。

 そして、直接的なキッカケは2名の先生に出会ったことが大きく影響しています。1人目は、工業高校の時に出会った先生です。勉強にすごく力を入れられている先生で、「勉強して大学に行きなさい」という話をされていました。私が通っていた工業高校は、佐賀大学に毎年進学する学生がいましたので、「行ってみよう」と思って佐賀大学に進学しました。2人目は佐賀大学海洋エネルギー研究所の池上康之先生です。最初は高校の担任の先生から「佐賀大学なら海洋温度差発電というものがあるから一回勉強してみないか?」という話がありました。それで、海洋エネルギーセンターのオープンラボに参加したのですが、その時に池上先生のお話を聞いて「面白そうだな」と思ったんです。佐賀大学に進学後、運の良いことに海洋温度差発電の研究室に進むことができました。卒業後は温度差発電関連の会社で働いてから佐賀大学に来ました。

 

 

3.研究についてお聞かせください。(研究の魅力・抱負)

 

 2021年に嬉野市に開設された海洋エネルギー研究センター嬉野サテライトで、実際の温泉水の熱を利用した発電システムの研究開発を行っています。具体的には、温泉水の蒸気を利用して、その熱を使って発電電力を得る。原理としては火力発電と同じで、沸点の低い冷媒を沸騰させて、その蒸気をタービンに送って、タービンを回転させて、その蒸気を冷やして液体に戻して、その液体をまた沸騰させてあげるというような工程を繰り返し行うシステムとなります。温泉水を使った発電システムの性能解析や取得したデータを使った解析、熱交換器の伝熱性能、発電電力量の測定、温泉水の蒸発後の成分分析などを行っています。蒸発して出てくる水は温泉水全体の1%程度ですので、1%の温泉水で発電しているとも言えます。発電にはアンモニアと同じく沸点の低い245faというフロン系の冷媒を使っています。水はシステム内の冷却塔に補給できないかというところも検討しているところです。この発電システムの場合、装置全体の性能として見ていかないといけないというのが面白いところです。1個メリットを考えてやってみるとデメリットが出てきて、それに対して試行錯誤しながら一番いい手を選んでいく。答えがないことなので、より面白いです。
 これからの抱負としては、継続的に動かせる発電システムを作りたいですね。あと、温泉水の汚れの問題をなんとか解決できればと考えています。
 また、温泉だけではなく工場排熱もそうなんですが、「熱はあるんだけど利用先がない」というようなところもあるので、そういった人達がその熱を利用できるようなシステムとしたいです。この発電システムを完成させたら未利用の熱エネルギーを利用した地産地消のシステムとして利用をしてもらえるのではないかと考えています。

 

 

4.学生に教えている授業内容についてお聞かせください。

 

 授業はまだ受け持っていませんが、研究室のゼミ生と関わることが多いですね。熱力学、伝熱工学(熱交換器がどうやって熱を伝えるのか)というところを教えています。

 

 

5.学生に向けて一言いただけますか?

 

 座学も大切ですが、いろいろな人と会って、話を聞いて、システム構築のプロセスや運転状況等を見聞きしてもらいたいですね。学術的な部分を突き詰めるのは有意義だと思いますが、実際に使われている機器やプロセスを見させてもらったり、話を聞いたりすることで、「なぜそのプロセスを選んだのか」などの参考になる話を聞くことができると思います。自分たちの研究内容以外の分野だとしても、いろんな人に会ってほしいですね。今はコロナで難しいと思いますが、佐賀県内は熱が発生するプロセスのある工場が多いので行ってみると面白いと思います。

 

 

6.佐賀に住んで感じたことはありますか?

 

 佐賀には面白いスポットが多いなと感じました。大学生になってから車に乗り始めたので、行動範囲が広がってそう感じたという部分もあります。ラムサール条約登録湿地の東与賀、伊万里焼の産地(大川内山)、鹿島の酒蔵など、いろいろと見て楽しめるところが多いなと思いました。

 

 

7.休日はどのように過ごされていますか?

 

 プラモデルを作ったりしていますね。以前は、戦闘機やバイクなどでしたが、最近はオランダ人アーティストのテオ・ヤンセンさんのミニビーストを作っています。

 

 

8.今後の目標をお聞かせください。

 

 まず温泉水を利用した発電システムが安定的に動くよう、このシステムを確立したいです。そのためには、温泉水や温泉水の汚れの成分について化学分析を詳細に行って、「どうして汚れが発生するのか」「汚れを発生させないためにはどうしたら良いのか」を考えながら、それらの問題解決に努めていきたいと思っています。

 

 

9.県下の企業・自治体・学校の中で何かやるとしたらどんなことをやりたいですか?

 

 今後、プレート式熱交換器の健全性評価をしたいと考えています。チューブ式熱交換器の健全性評価はあるのですが、チューブ式よりも新しいプレート式熱交換器は、波のある薄板を積層した状態で設置されているということもあり、装置がどういう状態であるか、どのくらいの期間使えるのかということをきちんと評価する方法が未だありません。このような状況ですので、余寿命推定・管理に協力いただけるところや、検査手法や検査機器を扱われている企業さんがあれば一緒に研究して、定期点検可能な状態にしたいです。

 

 

10.センターのご紹介をお願いします。

 

 嬉野サテライトは、温泉水による発電システムの実証実験設備を設置し、2021年3月に開設された新たなサテライトです。実際に嬉野温泉の旅館22軒や各家庭210軒に送る95度の温泉水を活用して発電しています。システム自体はまだ開発段階ですが、伊万里サテライト同様、見学可能ですので、ぜひ一度足をお運びください。