佐賀大学リージョナル・イノベーションセンター

お問合せ

佐賀大学の教員紹介

HOME >  佐賀大学の教員紹介 > 『佐賀大学の教員紹介』教育学部 中里理子先生

佐賀大学の教員紹介

『佐賀大学の教員紹介』教育学部 中里理子先生

2020.03.24
佐賀大学の教員紹介

教育学部 学校教育課程 中里理子教授

 

 

1.ご出身はどちらですか?

 

 神奈川県相模原市です。その後、東京で暮らしている方が長いです。それ以外に、仕事で上越(新潟県)に13年住んでおりました。
 こちらに来た時に「九州に知り合いがいるんですか?」って聞かれましたが、まったくいません(笑)

 

 

2.この道の先生になろうと思ったキッカケについて

 

 私の卒論テーマが「オノマトペ(※)と一般語彙の違い」だったんです。そもそもなぜ卒論でオノマトペを研究しようと思ったのかというと、太宰治の小説の中に「船がよろよろと通っていく」とかいう描写があって、主人公の心情を反映しているようなオノマトペの表現に感動したんです。そこからオノマトペに興味を持って研究をはじめました。

 

※擬音語と擬態語の総称

 

 

3.研究についてお聞かせください。

 

 オノマトペに関しては大きく3種類の研究をしています。1つ目は「意味変化」、2つ目は「ジャンル(軍記物語、説話、狂言、浄瑠璃等)によるオノマトペの特徴」、3つ目が「文学作品の中のオノマトペの効果」です。

 

 1つ目のオノマトペの意味変化ですが、例えば「うっかり」と「うっとり」という語は江戸時代から明治中期には同じような意味を持っていたんです。「茫然とする」という意味です。「呆れてうっかりと見ている」とか「頭を打たれてうっとりする」とか。今はどちらも使わないですよね。類義語だった「うっかり」と「うっとり」が、「うかうか」「うとうと」という語と関連しながら、プラスの意味とマイナスの意味に分かれていく変化の過程をたどりました。

 

 意味変化の要因の一つに、明治になって世の中が近代化するとともに文章の近代化も進んで、それに合わせて、曖昧だった言葉の意味をはっきりさせるような意識が高まったことがあるんじゃないかと思います。例えば「うっとり」「うっかり」はそれぞれに3つぐらいの意味があったんですけど、意味の範囲を狭めて正確に表現する方向に進んだんじゃないかと推測しています。

 

 明治時代の初めは小説に漢語を使うことが多くて、漢字にカナをふっていました。例えば「周囲」に「まわり」というカナをふるとか。小説に漢語を使うとき、「茫然」に「うっかり」とカナがふってあったら、「うっかり」は「茫然」の意味で使っているんだとわかったんです。だんだん、漢語ではなく日常の言葉を小説に使うようになって、漢語を使わずに「まわり」「うっかり」とかを使うようになったんです。そうすると「うっかり」に3つも意味があったら文の意味が曖昧になってしまう。それを解消するためにも、それぞれの言葉の意味の領域をはっきりさせることが必要になったんじゃないかと思います。

 

 研究のやり方ですが、昔は片っ端から本を読んで一語ずつ抜き出したので膨大な時間が掛りました。今は青空文庫(※1)などのデータベースがあって、それを使って調査できます。江戸後期や明治は、例えば「賢い人」を「発明な人」と言ったり、今とは違う意味の言葉があっておもしろいですよ。

 

 今、取り組んでいる研究の中心は、江戸の浄瑠璃作品に見られるオノマトペです。近松門左衛門やそれ以後の作品を対象にしているんですけど、今年度で調査を終えて、次は江戸の歌舞伎作品を対象に調査する予定です。浄瑠璃は、人物のセリフと「行くも戻るも二人づれ」のような地の文があるんですけど、歌舞伎はセリフとト書き(※2)でできているので、オノマトペの現れ方が違ってくるんですね。そういう違いを面白いと思いながら研究しています。

 

 3つ目の「作品中のオノマトペ」ですが、徳田秋声、岩野泡鳴、田山花袋など自然主義の作家の作品を対象に、人物や情景描写と関連させて分析しています。

 

※1 電子図書館
※2 脚本で、せりふの間に、俳優の動き・出入り、照明・音楽・効果などの演出を説明したり指定したりした文章。

 

 

4.学生に教えている授業内容について

 

 授業は9種類あります。全部、国語学・日本語学に関する授業で、オノマトペはちょっと触れるくらいです。教育学部ですので国語学・日本語学の知識をしっかり身につけた方がいいと思って教えています。

 

 

5.学生に向けて一言いただけますか?

 

 本をもっと読んでほしいですね。小説を読むことでいろんな想像力が必要となって、論理力も養われると思うんです。脳のいろんなチカラを養うには小説を読むことも必要だと思うんです。単に情報を得るだけではない、いろいろな本の楽しみ方があることを知ってほしいですね。

 

 本を読むことで想像力が養われたら、人生が豊かになるような気がするんです。「これは小説のあの場面と似ている」「あの人物の感情と同じだ」って思うと、その時の感動や感覚がもっと広がっていくように思うんです。自分のいろんなその時々の感動が、平面ではなくて立体的になってくるような。その感動は音楽でもいいと思うんですよ。「あの歌詞は今感じている感情と同じだ」とか、そういうものでもいいと思うんです。音楽はみんな好きですよね?本も同じように好きになって読んでほしいんです。まぁ、<芸術>を楽しんでほしいってことですね。文学も音楽も絵画も映画も、芸術ですからね。

 

 

6.佐賀に住んで感じたこと

 

 (土地や空などが)広いなぁって思います。あと、空港が便利ですね。搭乗口まですぐだし、2時間くらいで東京にいけるので便利です。全体的に、のどかですよね。

 

 

7.休日はどのように過ごされていますか?

 

 本を読むのは大好きです。気晴らしに読むのは湊かなえや朝井リョウとかですね。漫画もよく読みますけど、「花田少年史」が好きですね。一色まことの絵がかわいいんですよ。あと、「ジョジョの奇妙な冒険」はいいですね。コミックって奥深いですよね。最近のものでは「弱虫ペダル」が好きです。
 音楽も大好きです。最近は80年代90年代の洋楽にはまっています。昔聴いたことあったけど曲しか知らなくて、「このバンドだったのか!?」ってYouTubeで発見して楽しんでいます。60年代のビートルズも大好きです。ブリティッシュロックは好きですね。「トラヴィス」とか。

 

 

8.県下の企業・自治体・学校の中で何かやるとしたらどんなことをやりたいですか?

 

 この2年間は附属学校関連の仕事をしてきたので、学校とは関わってきました。企業に対しては、例えば敬語講座などはできると思います。

 

 

9.現代社会においてコミュニケーション力が不足しているのは国語力が足りないからと思うんですがどうしたら良いと思いますか?

 

 まずは話しかける勇気が必要だと思います。これはコミュニケーション技術以前の問題ですよね。特に学生には、まずは勇気や自信を持ってほしいですね。そのうえで国語力が伸ばせるといいんじゃないかなと思います。時代とか年齢とかで読むのにふさわしい本がありますよね。そういうものを通して学んでいってほしいと思っています。