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2021.03.03
佐賀大学の教員紹介

農学部 生物資源科学科 德本 家康 助教

 

 

1.ご出身はどちらですか?

 

 熊本県の玉名市です。みかん畑が広がっていて有明海にも面してる、山も海もあるところで育ちました。

 

 

2.この道の先生になろうと思ったキッカケについて

 

 もともとは高等専門学校で工学の勉強していたものの、「これから農業が盛んになるだろう」と思い、親の反対を押し切って佐賀大学の農学部に編入しました。大学では勉強もしましたが、編入して半年後に、友人の紹介でカンボジアに学校を建設したりして、教育の場を提供する「NPO法人カンボジア教育支援フロム佐賀」のボランティアに参加しました。初めての海外でカンボジアに行って、教育現場や、現地の生活をみたり、現地の人にポル・ポト政権の話を聞いて、「教育1つで国が変わるんだ」というのを目の当たりにしました。そこから教育分野に携わりたい気持ちが強くなりました。
 私の研究分野では、他大学や他学部の先生とも交流がすごくあって、いろんな人と議論すればいいっていう雰囲気がありました。その分野の先生たちは、海外で切磋琢磨された先生がすごく多くて、たくさんの刺激を受けました。その中で自分の興味のある研究を推進される先生が岩手大学におられて、その先生のご指導の下で博士号を取りました。それから、アメリカの大学院にも入学して勉強しました。研究や講義アシスタントとして給料はもらいましたが、アメリカでは成績が落ちるとそういうのは切られるので、常に背水の陣でした(笑)そして、アメリカは居心地が良かったですけど、東日本大震災が起こり、私の研究分野の先生方が福島のセシウムの除染や津波被災後の農地復旧に果敢に立ち向かわれてました。私も一役買えないかと思案していたところ、幸運にも佐賀大学に就職ができました。

 

 

3.研究についてお聞かせください。

 

 これまでの研究では土の中から余分な塩分を取り除く「除塩」を津波被災農地の復旧に携わってきました。宮城県の津波被災農地の復旧事業に加えて、福島での放射性セシウムの除染に関するアウトリーチ活動にも関わりました。「百聞は一見に如かず」の発想において,学生を現場に連れていって、現場がどうなっているのかを見せたり、現場の人達から話をきいたりする活動も続けてます。
 アウトリーチ活動では、私が専門の土壌物理っていう分野から「なんで土を剥がないといけないか」とか「なんで土がセシウムを閉じ込めるのか」ということを小学校に出向いて話して、それだけでは限りがあるので教材を配布したりして子供たちにもわかってもらおうという活動を実施しました。最終的にはその漫画本を作って、小学校の子たちに読んでもらったりしました。海外向けに、英語と中国語訳も作りました。
 研究では、「水分・塩分移動」キーワードです。たとえば、地表に雨が降るよりも、土壌から蒸発する水分が多ければ、地下水に向かって塩分が流れていきません。そういう農地は、だんだん土地が劣化していって、作物を育てなくなったりするので、どうやって復旧できるかというテーマで、水の移動を正確に予想したり、水をどれぐらい撒くと塩分を下方に流すことができるかという研究などをやってます。
 研究の楽しさの一つに「サイエンスは嘘をつかない」があると思います。現場でデータを取得したら、それをベースに予想や仮説を立てて、室内実験などで検証するのは、まさにサイエンスです。今まで分からなかった現象やメカニズムの理解が深まり、将来にはそれが世のため人のために繋がれば大変魅力的ではないでしょうか。

 

 

4.学生に教えている授業内容について

 

 私の講義の一つに、実験や演習を行う「実験水気圏環境学」があります。環境保全や農業の生産基盤を支える「農業土木」に関わる授業です。たとえば、ダムや河川に関わる水の流れ、農地に土壌への水の浸透や作物生産の維持管理に必要な土壌水分移動について学び、最新の計測機器を用いて実測してもらいます。また、土地の距離・角度・面積を測る測量なども担当してます。

 

 

5.学生に向けて一言いただけますか?

 

 僕の恩師の言葉ですけど「熱くならなきゃ研究じゃない」「ワクワクドキドキを社会のために」ですね。与えられたことをちょっとやることで研究が成立する場合もありますが、大学で研究するなら、「世のために人のために役に立つモチベーションを維持しながら頑張る」大切さを伝えてます。また、学生の研究を通して、研究成果が生まれるため、一緒に頑張るスタイルで実験の試行錯誤を楽しんでます。
 一方で,インタビューの質問でいただいた芸術分野の学生さんに対する一言ですが、芸術の分野の学生さんは、自分の世界観を持つ子たちが多いと思うので、そこを突き詰めたり、情報を集めてきて、行動に起こすかどうかが大事じゃないでしょうか。私の学生の頃に比べたら、今の子たちはすごく恵まれてると思います。色んなことを調べるにしても、図書館に行って本を見て「コレだ!」って探すよりも、もうスマホで調べたら情報が出てくる訳です。それこそオンラインの機能を使えば日本だけじゃなくて世界中の人とつながってコミュニケーションを取るなんていうことも簡単にできます。そういう意味では「これをやろう」と思って、クラウドファンディングでお金を集めてきて、何か自分たちの考えを形にすることもできるますよね。大学時代のたくさんある時間の中で、ここでしかできない何かを見つけて、アクションを起こす。そういう時間に当てれるかどうかが重要な気がします。

 

 

6.佐賀に住んで感じたことは?

 

 私は海外生活の経験もあり、佐賀は「安心安全」っていうことを1番に感じます。バルーンとかイベントもいいですけど、自然豊かで美味しい食べ物もありますし、生活は本当にしやすいです。自然に囲まれた環境は佐賀の良さじゃないですかね。土地は平ですし(笑)

 

 

7.休日はどのように過ごされていますか?

 

 子供達を公園に連れて行って遊んだり、ジョギングしてます。田んぼ道やクリーク沿いを走ると、本当に平らなのがよく分かります(笑)たまにバルーンが飛んでいるのが見えたり、本当にきれいですね。背振山に囲まれた山並みの景色も凄くいいなぁと思います。

 

 

8.今後の目標をお聞かせください。

 

 「土壌-大気間における水・窒素・炭素循環機構の解明とモデル化」という研究に取り組んでます。今ではセンサーを用いて、土壌に関する個々の情報を「計測する」ことは随分容易になりました。しかし、地表面で起こる蒸発散量や地下水に浸透する流量を連続的に計測するシステム構築には課題も多いです。現在では日本の畑地や水田に対応した,それらのシステム構築に力を注いでます。今後、独自の計測システムの開発および、それらデータに基づく、農業生産における水・施肥管理などを提案していきたいです。

 

 

9.県下の企業・自治体・学校の中で何かやるとしたらどんなことをやりたいですか?企業や社会人の方へ一言いただけますか?

 

 土に関わる水分・塩分移動などで相談窓口になれれば幸いです。