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『佐賀大学の教員紹介』農学部 藤村美穂先生

2020.04.13
佐賀大学の教員紹介

農学部  生物資源科学科  藤村美穂 教授

 

 

1.ご出身はどちらですか? 

 

 大阪府です。大学院まで関西で過ごし、就職で初めて九州に来ました。

 

 

2.この道の先生になろうと思ったキッカケについて

 

 もともと山とか森林は好きだったんですが、大学院時代に、農村や山間部の人たちの生活環境や環境保護だけではなくもっと生活の奥にある何かを表現したいって気持ちになって研究し始めました。学生時代は滋賀や和歌山、今は熊本や宮崎をフィールドワークの拠点にしています。農業調査をするときは、自分でトラクターや田植え機を運転しながら一年間の農作業に全部参加するなど、農家がどういう風な生活をして、お互いにどんな会話をしてるのかなど、インタビューだけではわからないことも体験し、それを踏まえながら考えていきたいと思ってます。例えば、阿蘇の調査などでは2~3年かけて1つのテーマを書いてます。宮崎は調査を始めて20年以上になります。長年定期的に同じ地域に伺っていると、過疎化をしてるんだけど若い人達が帰って来てるとかそういう農村の変化もわかって面白いです。

 

 

3.研究の魅力についてお聞かせください。

 

 私は都会で育ち、農家の暮らしとかは自分にとって未知の世界だったので、その人たちの暮らしに触れることが私には魅力です。「どちらにも通底するものは何なのか?」とか「生きるってどういうことなのかな?」って考えると、「農村で山や家を継ぎながら生活している人と私たちとは表面上は違う生活だけど同じ部分もある」そういうところを見て表現することが面白いです。また、フィールドワークに行ってると、現地のお父さんお母さんのような方がたくさんできます。そこに行くと「野菜は持って帰らないの?」っていっぱいくれるし、いろんな話をしたり災害のときに心配しあったりする、そんな関係もいっぱいできたのでそんなところも魅力です。

 

 

4.佐賀県全体でイノシシの獣害が問題になってますが先生はどのような研究をされていますか?

 

 現在、イノシシや狩猟犬と人間の関わりの研究をしています。狩猟犬では、犬を完全に家畜化する一方、本能を残して狩猟犬としても扱う技術やしくみということを考えています。例えば、犬だけで狩猟する人は、イノシシを犬に囲ませて、最後は人間がナイフか鉄砲でとどめを刺すことが法で定められているんですが、かつては犬だけで仕留めるところまでさせていたことも多いんですね。私がこの前出会った人は、障害者の福祉施設でセラピードックとして犬を飼っていて、そのセラピードックが同時に狩猟犬でもあるんですよ。犬だけでイノシシが退治できる。犬だけでもそもそもそういうチカラを持っているんですよ。犬はちゃんとしつけていくと、人間に対してきちんと接するようになります。犬をイノシシが恐れるようになると、イノシシってすごく鼻がいいので、犬を曳いてそこらへんを歩くと、犬に襲われた経験のあるイノシシは臭いに怖がって寄ってこないんですよ。宮崎では犬を連れた狩猟が多いので、イノシシが少なくともその田んぼには近づかないんですね。イノシシ対策に、そんな駆け引きを使うっていう方法もある。住んでいる場所の近くに狩猟犬をバァって離すっていうのもなかなか怖いですけども、ある程度自分たちが危険意識を持って対応するっていうこともできなければならない。そのようなことを社会全体が許容しないと、イノシシに逆に人間の領域まで侵入されるんじゃないか。「犬を完全に管理しなければならない。でも、それは無理だからやめる。」っていうのでは「イノシシに対しても完全に自分たちで対応しなきゃならない」につながるっていうこと。そしたら、「イノシシが来た」って行政に電話して、犬は使えないから、柵をしたり罠をかけることになります。でも、イノシシも頭が良いから、身体が小さくて罠をすりぬけられる子イノシシだけを罠の中に入れて餌を食べさせて子育てして、逆にイノシシが増えていってしまうっていう風になってるのかなって思います。なので、社会がなにを許容するかっていうのを考えないといけないと思っています。

 

 

5.学生に向けて一言いただけますか?

 

 学生時代の間に勉強だけじゃなくて、何でもいいから心からワクワクすることを見つけてもらいたいなって思います。私は学生の時、山登りや岩登りが好きでした。どこに登っても「自分はあのときあそこまで歩けた」とか「自分の足で立ってる」っていうワクワクがあって、それはずっと感覚の中に残っている。だから論文を書いて苦労している時も、そのときの感覚がふと浮かんできたりします。たぶんなにかワクワクすることを見つけたら頑張れるし、それでいろんな体験を積んでいくと、たとえ仕事や勉強とは一見関係ないことであっても、それはきっと生きて、何かの形で人生に役に立ってくるかなと思います。

 

 

6.佐賀のおすすめのスポットを教えてください。

 

 私は養蜂をしているので、美味しい蜂蜜が取れるおすすめスポットならいっぱいあります(笑)。あとは、有明海沿いの海の干潟が面白いです。今でも現役で集落の人が使っている小さな港があって、そういう港は趣があってインスタ映えするという意味でも、佐賀独特の風景という意味でもいいなぁって思ってます。すごく景色がいいので、川沿いの小さな港に夕方にときどき見に行ったりとかしてます。

 

 

7.佐賀に住んで感じたことは?

 

 佐賀に住んで最初に感じたことは、時間がゆっくり流れているなって思いました。例えば、電車の中で乗り換えとかを聞いてもすごい親切に車掌さんも答えてくれるし、バス停とかで待ってるとお客さんが話しかけてくる。大阪の私の友達が来た時、ムツゴロウを買って「どうやって料理するんですか?」とレジの人に聞いたとき、その友達は「大阪だったら後ろに待っている人が怒るからレジの人に聞ける雰囲気じゃないのに、後ろのお客さんまでみんなで教えてくれたからびっくりした」って言ってました。佐賀ってそんなイメージ。みんなよくしゃべってコミュニケーションをとってくれるし、のんびりしてますよね。大阪に比べると、せかせかしてないですよね。

 

 

8.休日はどのように過ごされていますか?

 

 フィールドワークに行くことも多いんですけども、そうでなかったら蜂のお世話をしています(笑)季節によって、ミツバチがスズメバチに襲われないように巣箱の入口の広さを変えたりとか、こまめに点検にいってます。去年はいくつか土砂崩れで流されてしまいました。10個中ちゃんとミツバチが入るのが4~5個くらいなんですよ。うまく入ったとしてもスズメバチにやられたり、巣虫っていう虫がついてしまってダメになったりすることもあります。去年はちゃんとミツバチが入った巣箱が少なかったので、取れたハチミツの量は果実酒をつける瓶1個くらいでした。養蜂をやり始めると今年の気候がどんななのかとか、そういうのを敏感になってきて面白いです。

 

 

9.今後の目標をお聞かせください。

 

 日本の村の人たちのことは、日本語でしか表現できないかなって感じていたんですが、これからは海外に向かって表現することをやっていきたいなって思ってます。
 大学に来る留学生は、その国ではエリートの人だと思いますが、その留学生たちも私がよくいく宮崎の山奥の村に行くとすごい感銘を受けて、「実際に行って村の人たちの話を聞く」ってすごい大事なんだっていうことを学んだから、自分の国に帰ってもそういうことをやり始めたって言ってます。そして、海外の卒業生たちが教えている大学とネットでつないで「ゼミを一緒にやりましょう」っていう計画があります。今からの学生ってインターネット等の影響で世界の国境ってハードルが小さく感じているだろうから、試しにやってみようと思っています。私自身も、英語やパソコンなどを頑張らなきゃいけないと思ってます。
 あとは、海外の人が向こうからコンタクトをくれる機会も少しでてきて、自然の問題やコミュニティの問題とかに関心があるようなので、これから一緒に研究ができたらと思ってます。私は全然フェミニストじゃないんですけど(笑)、女性的な表現や視点から表現してみたいとも思ってます。

 

 

10.県下の企業・自治体・学校の中で何かやるとしたらどんなことをやりたいですか?

 

 今、農学部で学生が自分たちのキャリアモデルを作るためのものとして「アグリキャリアデザイン」っていう授業をはじめてます。政策や金融面からの農業への関わりとか「20・30代の先輩が何を考えてどういうことを思って就職しているか」や「農家の女性がどういういう風な暮らしをしているか」とかいろいろなキャリアモデルを見ながら、自分のキャリアデザインを作っていく。自治体にはたくさんそういう情報はあるし、自治体の人も若い学生に伝えたいことがあるという話をきいたので、これから一緒にやっていけるんじゃないかと思ってます。開講したばかりの授業なんですが、これから農業者の方と一緒に学生教育として、キャリアモデルを作る授業を作っていけたらと思っています。