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『佐賀大学の教員紹介』全学教育機構 村山詩帆先生

2020.07.30
佐賀大学の教員紹介

全学教育機構 村山詩帆 准教授

 

 

1.ご出身はどちらですか?

 

 生まれは宮城県の仙台市で、育ちは北海道です。
 仙台は大学院に行ったときと生まれてから四歳まではいました。北海道は15年くらいですかね。実家はまだ札幌にあります。

 

 

2.この道の先生になろうと思ったキッカケについて

 

 もともとは絵を描いたり、デザインしたりするのが好きで得意にしてたのですけど、職業にするほどの才能はないと悟って、高校の終わりぐらいに大学に行こうかって変節したんです。でも、大学に行ったはいいけど、正直大学ってなんだろうって思って、大学の外に目を向けてみようとやたらアルバイトをしました。その中で衝撃だったのはパン工場で、「あいつ慶應卒」とか「あれ帝大卒」とか、いわゆる高学歴のアルバイト労働者が何人もいて、その時に労働社会の恐ろしさみたいなものを垣間見た気がしたんです。そして、バイトによっては、収入の非常に良い仕事もあって、これなら大学に行く意味も無いし、大学は辞めてもいいかなと思ったら、バイト先の先輩に「学問の体系を全部知ってる訳でもないのになぜ大学に意味が無いという評価ができるんだ」みたいなことを言われて「なるほど」と、今までちゃんと勉強したことがなかったことを顧みました。そのころ大学院に行くことを目標にしてる友人も見つかって、真剣に勉強を始めたんですよ。
 それから、教育と労働の接続とか労働社会の中で経歴を通してどうやって人が配分されるのかに関わる分野に興味が出て、大学院から専攻を変えたんです。それからずっと「教育社会学」の研究をしていて今に至ります。

 

 

3.研究についてお聞かせください。(研究の魅力・抱負)

 

 人の選択的な行為・行動にも人それぞれの考え方もあるし、合理的に選択することに対する考え方もバラバラだし、そもそも合理性を重視していない人もいます。ある制度の中では、人はある条件下で、一定の確率で、ある割合で、どう行動するのか確率予測できるわけですが、どういう条件下でどう行動していくのか、その集積が人材育成にどのような影響をもたらすのか、そういうことを考えることには意味があると思っています。一人一人を見ていくのも重要ですけど、一人一人全てを見るのは極めて気が遠くなるし、とても不可能なので、その点やはり数字で捉えるっていうのは重要だと考えています。だから、統計データなど数字である程度を詰められることができると良いと思ってます。特に、人が見てないようなところに何か隠れてたりすることが明確になる、その辺りは面白いですよ。主流じゃないものに目をつけてみると、何か隠れてることがけっこうあるんです。
 得られたさまざまな情報がこの世のどこに位置づくのか、一個一個正確に理解できるようになれば、予測能力がもっと向上する軸を引くことができるようになって、数量化したデータを使ってより適切に何かを予測できるんじゃないかなと期待しています。例えば、飛行機に乗って下を眺めた時に車が動いてるのが見えますけど、その車がどこからどこに何の目的で動いてるのかっていうのを直観できるレベルの予測力が身についたら良いなと思って眺めたりしています。

 

 

4.学生に教えている授業内容について

 

 教育学部の授業科目や教職の科目を教えています。教職の科目には進路指導に関する科目があります。「生徒・進路指導の理論と方法」では、どういう教育を受けてた人がどういう労働市場との接点を持つかに関する基本的な仕組みや就職状況の変化などを教えています。他には、教養のインターフェース科目「リサーチ・リテラシー」というプログラムを担当していて、統計の入門編の話、調査技法などを教えています。学部の専門科目を履修する時に回帰分析まで修得しておけば楽になるかと思っています。

 

 

5.学生に向けて一言いただけますか?

 

 地方の国立大学って、周りを見てある程度現状で満足できてしまうところがネックなのかなっていう気がします。大学の中で単位をとって無難に卒業しようみたいな発想ってむしろ捨てて欲しいなって気がするんですよ。興味がないと思った授業でも自分に役立つ何かを拾いあげるんだ、みたいな。そういう考えを持って欲しいという気はしますね。得られるものをできるだけ探して、できるだけ多くを積み重ねて持って出ていく感覚を持って、学生生活に臨んで欲しいと思っています。一番言いたい事はそこですね。
 あとは、一回何かの事業で会社を立ち上げる事を考えてみるとか、やはり商売というものを考えてみることは大事で、結果的にどうなるかは別としてなるべく早いうちから、考えてもらえるといいかなって思います。ユーチューバーとかは、それ自体は事業ではありませんが、頭から否定するでも肯定するでもなく、まずはいろいろな分野に興味を持ってもらう契機になるよう利用すればいいんじゃないでしょうか(笑)

 

 

6.佐賀に住んで感じたこと(佐賀に住んでよかったこと・佐賀の魅力等)

 

 お祭りなんかは今まで住んでいた東の方とかなり違っています。唐津や伊万里からは地域の凝集力がものすごく高いと感じることがあります。髪の毛を染めたやんちゃなヤンキー兄ちゃんもお祭りが近づくと髪の毛を黒く染めて参加するようになって、不思議だなぁって。普段いくらでも自由にしている人の行動が、何かのシンボリックなもので体系化されているんだ、と。唐津くんちを見るとよく思いますね。あと、生物では、佐賀平野の固有種が結構いたりとか、九州北部辺りの絶滅危惧種とかその辺のクリークで網をス―って入れたら捕れたりしますね。佐賀は、生物に限らず、固有のものを見出そうと思えばかなり見出せるところだと思うんです。全般的に住みやすいですし、私が住んでいた北の方の地域に比べると、同じくらいの人口の都市でも佐賀の方が明るい気配がちょっとあると思うんです。九州の方では、大都市じゃなくてもしみったれた空気ではないのかな、っていうのを感じますね。何もないと自嘲気味に言う人もいたりする割に住み良いような。それでも歴史をたどれば、すごくいろいろなことがある。幕末でも、幕府側についた人もいるし、そうじゃなかった人もいるし、非常に歴史的に面白い。佐賀ほど面白い歴史をもっているところは無いと思うので、本当の歴史を脚色なしで史実通りに書いて面白いのはこの辺の地域なんじゃないかなって感じたりします。

 

 

7.休日はどのように過ごされていますか?

 

 今はなるべく自宅にいるようにしていますけど、家でも何かデータをいじっていたりすることが多いです。地域の行事とかあれば出ていったりはします。ただ、研究はずっとやっていても平気ですね。「本だけ持たされて刑務所にずっと入れられていても平気なくらいじゃないと大学院生は務まらないよ」って、進学するときに言われましたけど、もしそうなったら喜ぶかもしれない(笑)

 

 

8.今後の目標をお聞かせください。

 

 とりあえずは、佐賀に来てから集めたデータがずいぶん溜まってるので、それをまとめていきたいと思っています。この部屋に何個もある段ボールがずっとそのままなので、それもデータ化したいと思ってるんですよ。他には、最近は海外の教育の民営化の研究をしていて、例えば、「台湾の教育の民営化の地域ごとの違い」と「日本国内の地域ごとの違い」を年代別に比較して、どういう違いがあるのかについて研究したい、それはもう是非やりたいと考えているんです。

 

 

9.県下の企業・自治体・学校の中で何かやるとしたらどんなことをやりたいですか?企業や社会人の方へ一言いただけますか?

 

 例えば自治体などの公表したデータでも、担当者の方が考えておられるよりもさらに明らかに出来る事って結構あるんですよ。このくらいのデータの集計レベルなら、こういうところまでの分析が可能です、みたいなことをお話しするとか、企業に対してそのような話はできるかもしれません。あと、企業が人材育成についてどう考えているかという事については、企業の方に一度話を聞いてみたいと思うことがあります。
 経済においてトータルで生産性を上げる事の出来る人材育成を考えると、現代の社会が経済主導で進んでいっているにも関わらず、実は経済に資する人材を十分育成できてないっていう風に感じるんですね。今の教育で、大学を出た学生が、職業人として、社会人として、ちゃんと育っているんだろうかっていうところを、機会があれば是非お聞きしたいと思っています。