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佐賀大学の教員紹介

『佐賀大学の教員紹介』地域学歴史文化研究センター伊藤昭弘先生

2020.09.30
佐賀大学の教員紹介

地域学歴史文化研究センター 伊藤昭弘教授

 

 

1.ご出身はどちらですか?

 

 長崎県南島原市になります。

 

 

2.この道の先生になろうと思ったキッカケについて

 

 子供のころから歴史のドラマ、漫画や小説などが好きでした。大学は日本史の研究室に入ったんですが、そこで専門的にやるのは今までの興味とは全然違うものでした。そこから研究のやり方とか教わって、それはそれで面白いなと思ってですね。もう少し続けて勉強してみようかと思って大学院に上がって、いろいろあって今に至る感じですね。

 

 

3.研究についてお聞かせください。(研究の魅力・抱負)

 

 大学時代から江戸時代の経済に関する研究をずっとやってました。私の大学の先生とか先輩が皆で集まって佐賀藩のことを研究した本が1980年代の終わりぐらいに出て、佐賀藩はもう研究する余地がないのかなとか漠然と思っていたんですけれども、2006年にこのセンターに着任してから、佐賀の古文書をじっくり読んでいくと、まだ色々とやれることがあるんだなと。むしろ、やられていないことの方が多いことに気づいて、それから自分の研究としては、ずっと佐賀のことをやってる状況ですね。
 歴史の研究で、古文書を使うと言うと敷居が高そうですけど、やる作業というのはいろいろ証拠を集めて、今までの研究で言われてることが正しいのか、自分が考えたストーリーが正しいのかを検証していくことが中心なので、文学的というより、理系の人がデータをたくさん集めてそれで論文を書いたりするように、私たちもまず古文書から証拠とかを集めていって、話を組み立てていくということになります。そこがパズルというか、ある意味ミステリー小説を読んでその先を予測したりするのが好きな方には、割と合うんじゃないかなって思います。
 特に、私の専門の江戸時代というのはたくさん古文書が残っていまして、丸1日古文書に目を通しても全く成果がゼロなことも当然あるんですが、一つでも自分の話に関わることが見つかったら「おぉ良いのを見つけたな!」と興奮することもあって、そういうところが楽しいです。

 

 

4.学生に教えている授業内容について

 

 古文書を解読する授業をやります。古文書は少し読めて行くようになればちょっとずつ面白くなっていく。でも、やはり難しいんです。これは能力の高い低いじゃなくて、どうもくずし字を見て、すっと入っていける人と全然読めない人がいます。これはやっぱり個人差があると思うんです。書道をやったことある人は入りやすいとおっしゃる方もおられます。割とスムーズに読める方もいれば、全く受け付けない、頑張ろうとしても本当にわからないっていう人もいるみたいで、これはもう努力が足りないとかそういう問題ではないですね。授業での教え方は難しいですけど、最初の導入のところを丁寧に教えてあげたらいいかなと思います。
 また、江戸時代の住所録の地図を使って、「この16番の当たりは今何があるか調べましょう」といって実際その場所に行ってみたりとか、今住んでいたり、普段通ってたりする場所が昔どういう所だったのかを実感してもらえるような授業をやっています。

 

 

5.学生に向けて一言いただけますか?

 

 私の授業を受講している学生に期待したいのは2つあります。1つは教養科目を受講している、理系の学生さんも含めた皆さんへ。日本史の専門的なことに取り組むのは難しいと思うので、古地図を使った話のように、江戸時代の仕組みとか、元々あった町の形とかが今にも繋がってて、そういうなかで皆さんも今そこに住んだり通ったりしてるっていうのを実感して欲しいというか、自分が生きているその空間自体が歴史の積み重ねの産物であるということを、感じてもらえればなと思います。自分が住んでいるアパートも、元々はお侍さんの誰々さんが住んでたんだな、とかですね。歴史の積み重ねの上に現在があることを感じてもらえればな、という思いがあります。
 もう一つは芸術・地域デザイン学部や教育学部での授業を受講されている方へ。芸術・地域デザイン学部の人は、ひょっとしたら地域の歴史とか文化を扱うような仕事、自治体の文化財担当などに就かれる方がいらっしゃる可能性も高いですね。古文書が地域の歴史とかを知るために、大きな武器になるかもしれない、そういう考えから、古文書に関する知識を深めて欲しいなと思います。また教育学部の方が先生になって、地域の歴史を生徒さん達に教えたりする時に、古文書が教材として使えるかなって考えてもらえればと思います。
 あと、今の学生さんはすごく真面目だなって、コロナ禍のオンライン授業になっても、多くの人がきちんと授業を受けてる姿勢でも感じてます。今のまま頑張ってほしいなって思います。

 

 

6.おすすめのスポットや佐賀の魅力を教えてください。

 

 松原神社はお参りに行ってみるだけでも楽しいですけど、灯篭とか手水舎をいつ、誰が奉納してるのか見てみると、江戸時代のものが多いんです。江戸時代の佐賀藩の武士たちには9つの階級がありました。現代に例えると、県の副知事とか要職に就くのはここの家々だけ、部長にはここの家々しかなれないとかあるんです。そういう武士の家格ごとに灯篭とかを奉納してて、この燈籠はこういう家格の人たちが連名で奉納しているんだなとか分かったりします。そういうお寺や神社などのスポットに行かれたら、灯篭など誰が奉納しているのか見ても面白いと思いますし、最近は案内板も充実してて、その場所は江戸時代どういうところだったのかわかるようになっているので、そういうものを参考にして、江戸時代を想像しながら散策するのも楽しいと思います。
 また、歴史と関係ないですけど、よく県外の方に「佐賀は九州だから焼酎飲むんですか?」と聞かれますが、佐賀は日本酒が美味しいですよね。各町に最低一つずつぐらいは酒蔵さんがあって、それぞれ個性的なお酒を出されているので、お酒好きとしては是非佐賀の日本酒をオススメしたいです。

 

 

7.休日はどのように過ごされていますか?

 

 スポーツを見るのが好きで、サッカーのサガン鳥栖やバスケのバルーナーズを観戦に行ったりしてました。コロナ禍では、家でネットのドラマを見たり、将棋中継を見たりしてます。次男の誕生日に将棋をプレゼントしたら一緒にハマってしまって(笑)、NHKの日曜にやってる将棋番組を見たり、ネットで放送している対局を見てます。

 

 

8.今後の目標をお聞かせください。

 

 佐賀大学の教員としては、授業を受けた学生さんが地元や色んな所で、それぞれの地域の歴史に関わる仕事に就いて、そういえばあの時習った授業の知識が使えそうだなとかいう人がでてきたらいいなあと思います。授業で古文書などを使いながらできるだけ分かりやすく、地域に対する興味をわき起こさせるための古文書の使い方を教えていくような授業をしたいというのが目標です。
 そして、研究ではまだまだ佐賀の歴史では分かってないことが多いと思うので、江戸時代の佐賀についてまとめた本でも出せるような研究を続けていきたいなと思います。佐賀藩の特徴の一つは、毎年の藩の収入と支出を書いた帳簿が約80年分残っているところです。それは多分私の知る限り、佐賀藩だけなんですね。藩の財政は、だいたいどの藩もお金がなくて苦しかった、という話になっていて、藩のことを研究する時はそれが前提になっています。でも帳簿が残ってるわけではないので、実際に財政がどういう状況だったのかを丹念に調べられるのは、実は佐賀藩ぐらいしかなかったりするんですね。なので、佐賀大学に来て以来その史料の分析に着手していて、これからも続けていきたいと思ってます。

 

 

9.県下の企業・自治体・学校の中で何かやるとしたらどんなことをやりたいですか?企業や社会人の方へ一言いただけますか?

 

 自治体で講演会や展示会をやったりしてるので、地域とは深く関わっています。これからは、今まで当たり前の事実かのように言われてたことを、きちんと証拠があるものと無いものに分けていって、佐賀の歴史を考えていきましょうっていう話を、いろんなところでやっていきたいなと思います。

 

 

10.地域学歴史文化研究センターの紹介をお願いします。

 

 センターの中に4つ研究部門があります。まず「考古学」。全国的に有名な吉野ヶ里遺跡があることからも分かるように、佐賀県域には貴重な遺跡がたくさん存在しているので、それを研究対象としています。次に「地域史・史料学」という古文書を使って研究する部門。「洋学・思想史」は、佐賀藩は西洋の医学や科学技術をいち早く導入したことを重視し、設置しています。最後に「国文学・文献学」。主に江戸時代の文芸・文化に関する研究を進めています。各部門の教員は、佐賀の歴史文化を掘り起こしていくのが主な仕事になりますね。そして、成果を地域に還元したり、学生さんの授業に使っていくことを目的としています。またセンターの建物(菊楠シュライバー館)には展示室や図書室もあるので気軽に来ていただきたいですし、地域の歴史に関する資料もありますので、できれば学生さん達の調査研究に使って欲しいと思います。